ハイブリッド型蓄電池ってどういうもの?導入するメリットとは
2019年に再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT制度)が順次廃止されるのに従って、家庭用太陽光発電で生み出した電力を売電ではなく自家消費に当てようという動きが出始めました。そのためには電力を貯めておく蓄電池が必要不可欠です。今回はハイブリッド型蓄電池の概要や役割、メリット・デメリットについて解説します。
そもそもハイブリッド型蓄電池とは
住宅用の定置型蓄電池は単機能型蓄電池とハイブリッド型蓄電池とに区分できます。この二つの違いを理解するにはパワーコンディショナーについて知らなければなりません。
パワーコンディショナーとは太陽光発電で生み出した直流電流を、家庭で使用する交流電流に変換する機械です。パワーコンディショナーは太陽光発電設備だけではなく、蓄電池にも必要です。
太陽光発電設備用と蓄電池用の2つのパワーコンディショナーが必要なのが単機能型蓄電池、2つのパワーコンディショナーを1つに統合したのがハイブリッド型蓄電池です。
ハイブリッド型蓄電池を導入するメリット
ハイブリッド型蓄電池を導入するメリットは以下のとおりです。
・電力の変換ロスが少ない
・停電時でも太陽光発電をしながら蓄電できる
・細かなモード設定ができる
1つ目のメリットは電力の変換ロスが少ないという点です。太陽光発電で生み出された電力は直流電流でそのままでは家庭用として使用できません。そこで、パワーコンディショナーを使い、家庭用の交流電流に変換します。直流電流を交流電流に変換する際に生じてしまうのが変換ロスです。
現在販売中のパワーコンディショナーの変換効率は95%前後ですので、約5%の電力が変換時に失われるといえます。太陽光発電設備と蓄電池のパワーコンディショナーが別々の場合、2度変換が行われるため、ロスが大きくなります。
100×0.95=95% 95×0.95=90.25%という計算になるため、電流を2つのパワーコンディショナーを通すだけで9.75%の電力が失われる計算となります。しかし、パワーコンディショナーが1つだけのハイブリッド型蓄電池の場合、失われる電力は5%で済むので、電力ロスを最小限にできるのです。
2つ目のメリットは停電時でも太陽光発電をしながら蓄電できることです。停電時の太陽光発電の電力を利用して家庭内の電化製品に電力を供給することを「自立運転」といいます。パワーコンディショナーが2つある通常タイプの自立運転時の出力は1.5kWhです。この出力では最低限の家電製品しか動かせません。
これに対し、ハイブリッド型蓄電池の自立運転時の出力は4.0〜6.0kWhで通常タイプの3〜4倍の出力です。使用電力の100%をまかなうことはできませんが、通常型に比べるとだいぶ余裕があるといえます。
そして3つ目のメリットは細かなモード設定ができることです。多くのハイブリッド型蓄電池には「売電優先」「自家消費優先」といったモードが設定されており、状況によってモードの使い分けができます。
ハイブリッド型蓄電池を導入するデメリット
メリットが多いハイブリッド型蓄電池ですが、デメリットもあります。1つ目のデメリットは価格が高額である点です。単機能型蓄電池と比べると高額で、蓄電容量が大きくなればなるほど、単機能型蓄電池との差額が大きくなります。
停電対策の度合いによっても差額が変化します。最も高いのは停電時に全ての部屋の電気を使用できる全負荷タイプです。予算に余裕がないときは、家の一部の電源が使用できる特定負荷タイプにするとよいでしょう。
2つ目のデメリットは、既存設備の交換が必要な点です。通常型で2つ設置してあるパワーコンディショナーを1つに統合するため、1つは不要となります。また、既存の太陽光発電設備とハイブリッド型蓄電池のメーカーが異なる場合、相性の良し悪しについて考える必要もあります。
基本的には太陽光発電設備とハイブリッド型蓄電池を同じメーカーでそろえるとよいのですが、価格面などさまざまな都合で別のメーカーの製品どうしを連結させる場合は、メーカー同士の相性に気を付けなければなりません。メーカー同士の相性については太陽光発電設備を扱っている事業者が詳しいので、直接問い合わせるとよいでしょう。
まとめ
今回は「ハイブリッド型蓄電池ってどういうもの?導入するメリットとは」と題して、ハイブリッド型蓄電池の機能やメリット・デメリットについてまとめました。電力の変換ロスが少なく、停電時でも蓄電可能で、細かくモード設定できるのがハイブリッド型蓄電池のメリットでした。その反面、設置費用が高いことや太陽光発電設備とハイブリッド型蓄電池のメーカーの相性について注意しなければならないといったデメリットもあります。これらのメリット・デメリットを考慮し、ハイブリッド型蓄電池のメーカーや施工業者を選ぶとよいでしょう。